インクカートリッジ事件③

インクカートリッジ事件の続編です。今回は、知財高裁が示した特許権消尽の判断基準について検討します。前々回にも簡単に触れたように、特許権消尽の判断基準としては、侵害を疑われる者の行為が新たな「生産」に該当する場合には特許権は消尽せずに特許権…

インクカートリッジ事件②

インクカートリッジ事件の続きです。今回は、①被告がリサイクル業を営んでいたこととの関係で、地球に優しいリサイクル業を抑圧するような原告の差止請求を認めるべきではない、という主張と、②特許製品に関する原告のビジネスモデルが道義上問題であるため…

インクカートリッジ事件①

前回予告したように、今回は3番目の知財高裁大合議判決たるインクカートリッジ事件について扱います。株式会社キヤノンが有する特許技術を利用したインクカートリッジに関して、再生品を製品化し、販売していたリサイクル・アシスト株式会社が、特許権者た…

パラメータ事件③

パラメータ事件完結編です。今回は「特許法36条6項1号の「(発明が)『発明の詳細な説明』欄に記載された」といえるためにはどの程度の記載が必要なのか」という問題点①について検討します。文字通り解釈すれば、「発明」は特許請求の範囲の記載内容によ…

パラメータ事件②

前回からかなり時間があいてしまいました。お待ち頂いた方まことに申し訳ありません。気を取り直して引き続き、パラメータ事件について取り上げます。今回は、本事案で問題となった点のうち、②同号の判断をするにあたって、特許出願後に提出された実験証明書…

パラメータ事件①

前回は、知財高裁で初めて大合議の対象となった「一太郎」特許侵害事件を扱いました。前回の一連の記事をまとめるに当たって管理人は判決文をかなり読み込んだのですが、なかなか読み応えがあってマニア心をくすぐる素敵なものでした。ということで、今回も…

「一太郎」特許侵害事件⑤

完結編です。前回、本事案における特許権の有効性の判断では進歩性の有無が問題となり、進歩性とは当業者が公知技術に基づき容易に発明できない程度の困難性であることを前提とした上で、裁判所の判断について説明しました。具体的には、裁判所は、①代替技術…

「一太郎」特許侵害事件④

前回に引き続き、特許権の有効性について論じます。前回の最後に述べたように、特許権の無効理由のうちのいわゆる「進歩性」の有無について本事案では判断がなされていますが、そもそも進歩性とは何でしょうか。一旦特許権が成立したにもかかわらず特許権が…

「一太郎」特許侵害事件③

それでは、原告の特許権の有効性について検討していきます。前回説明したとおり、被告が製造・販売していたソフト「一太郎」が原告の特許権を侵害(間接侵害)していることが明らかとなったわけですが、原告の請求が認められるためには、そもそも特許権が有…

「一太郎」特許侵害事件②

今回は、被告製品が特許権を侵害するものかについて検討を行います。なお、特許権侵害が成立する前提としてそもそも特許権が有効なものである必要があるのですが、特許権の有効性については次回で論ずるので、ここではあくまで特許権が有効であるとした場合…

「一太郎」特許侵害事件①

今回は、ジャストシステムが製造・販売するワープロソフト「一太郎」が松下電器の特許権を侵害するとして松下側が提訴したという、「一太郎」特許侵害事件を取り上げます。松下製品の不買運動が提唱されるほどの反響が生じた事案であるとともに、知的財産高…

映画「シェーン」保護期間事件④

完結編です。最後は、地裁判決に対する論評および今後の展開の予想です。もっと早くアップする予定だったのですが、誤って原稿を消去してしまい、書き直すのに時間がかかってしまいました。まず、地裁判決の結論は妥当と考えます。経過規定に関する原告の主…

映画「シェーン」著作権保護期間事件③

前回明らかにしたように、原告の主張には、幾分説得力のある事実関係も含まれていたため、裁判所は、これらの事実関係が結論に影響を及ぼさない旨を理由を挙げて説明しています。原告が主張した事実関係の中には、(1)法学者、新聞報道共に改正法成立当時…

映画「シェーン」著作権保護期間事件②

前回明らかにしたように、映画「シェーン」著作権保護期間事件では、平成15年12月31日に存続期間が満了する著作権が、平成16年1月1日時点で存続している著作権にのみ適用される改正著作権法の適用を受けるか、という点が争点となりました。ここま…

映画「シェーン」著作権保護期間事件①

今回は、映画「シェーン」著作権保護期間事件について検討します。平成15年著作権法改正により映画に関する著作権の存続期間が延長されたのですが、改正法の施行日(法律が実際に効力を発する日)の前日まで保護期間が存続する映画「シェーン」についても改…

Winny裁判③

完結編です。最後に、ネット上で見かけた意見について、独断と偏見に満ちた評価をさせていただきます。多分に素人考えのところがあるので、不十分な点ないし誤解している点があった場合にはご指摘いただけると幸いです。(1)京都地裁が「被告人は著作権侵…

Winny裁判②

それでは各論に入ります。以前書いたように、幇助罪が成立するためには①正犯の存在、②問題となっている行為が正犯を幇助したものである、③正犯を幇助することにつき、故意が存在、というすべての要件を満たす必要があるため、各要件につき順次検討します。(…

Winny裁判①

地裁判決からちょっと期間がすぎてしまいますし、実際には知財というよりも刑法総論の範囲が問題となる事案ですが、ネットでもかなり話題になった事案ですので、第一弾としてWinny裁判を取り上げます。 なお、現時点(12/28)では判決文が入手できませ…